おいしい時間 しあわせのカタチ

 眠そうな目をこすりながら、手にはコンビニ袋を持っている。

 覗いているものからして牛乳とパンだろうか。いかにも一人暮らしの休日の朝、という感じだ。

 図ったつもりはないのだが、向きを変えようとして、ベランダの床が思いもよらぬ音を上げて軋んだ。

 チャチな造りのせいなのか、もともとの素材がやわなのか、普段から歩くだけでもよく鳴るのだ。

 静かだが、気詰まりのないゆったりとした秋晴れの町に不釣合いなその音で、ふたりが顔を合わせることはとうてい逃れようのない成り行きだった。

 お互いなんとも言えない心持ちのまま、ぎこちない会釈を交わした。


「おはようございます」

「お、おはようございます。干し柿ですか? 季節ですね……ははは」

「買出しですか?」

「ええ、まぁ。冷蔵庫になにもなくて」 


 掲げて見せたビニール袋には財布とスマホも一緒になって収まっている。牛乳の結露がつかないのだろうか。

< 45 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop