おいしい時間 しあわせのカタチ

「――遠くにいても、ずっと眩しいと思えるひとが、その人にとっての最良のパートナーなんじゃないかって」

「遠くにいても……?」

「佳織さんは、どうですか?」


 今の恋人を100%失望してしまったのだろうか。

 ならばそれも仕方ない。

 だとしたら、佐野くんは。彼もまた遠方にとばされてしまったなら。

 どちらがより輝いて見えるだろう。

 あるいはどちらも時間の経過と共に褪せてしまうだろうか。

 ここではないどこかを見ながら、佳織さんは沈思する。想像しているのだろう。

 佐希子は自らもコーヒーに映る自身を見つめながらかんがえる。

 ……本当なら、いつでも触れられる距離に相手がいてくれる恋愛が一番のはずだ。

 少なくとも佐希子自身はそう思っているし、そうじゃなくなることでやむを得ずさよならを決断したこともある。

 物理的な距離を埋める心と時間を惜しんだ。

 直に触れ合えて、見つめ合える以上の幸せはないという固定観が根っこにあるから。

 だから本当は佳織さんに言いたい。佐野くんでいいじゃない、って。

 そう言えないのは、距離の有無に関係なく、幸せの見つけ方を知っている人を口惜しくも知っているせいだ。

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