おいしい時間 しあわせのカタチ


「佐希子さん」


 トイレットペーパーを下ろしながら、ここへ来てなにやら一段とかたい面持ちで根岸くんが呼んだ。


「どうしたの」

「……大上、ほんとに来ますかね」

「うーん……」


 平静を保っている中にも、隠しきれない怯えのようなものを見つけてしまえば、佐希子はにわかに言葉に迷った。

 だが、ホームセンターでの大上さんを思い出すと、下手なことを言って期待を持たせようとするほうがかえって根岸くんを追い詰めそうな気もする。


「――そうねぇ。あそこまで言ったからにはね」

「……ですよね」


 根岸くんは、うちに来てからはじめて見せるシニカルな笑みを口の端に浮かべ、ひとしきり忌々しげに鼻の下を擦ったあと、


「俺、あいつ嫌いなんですよね」


 ――まあ、そうだろうね。
 
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