おいしい時間 しあわせのカタチ
厨房からカウンターへと顔をのぞかせて、根岸くんはにっと白い歯を見せて笑った。
あくまでおとなの対応を心がけている。
「おー! ちゃんと職人じゃんかおまえ。この前とは全然ちげぇ」
「おい。ばかにしてんのか」
「してねぇよ、感動してんの。ああそうだ、おまえの分もあるからな、ケーキ」
「マジ? さんきゅ」
「いーえ。――じゃあせっかくなんで、おまえのおすすめ料理にしようかな。おまえらなんか要望ある?」
大上くんはおしぼりで手を拭きながら、同僚らしいふたりに問いかける。
「とりあえず牡蛎飯とビーフシチューをメインに、あとは適当に見繕って欲しい感じ」
「俺もそれで」
「あいよー。佐希子さん、これ、とりあえず冷蔵庫に入れておきますね」
「お願いします」
ケーキの袋を手に、根岸くんは早足で厨房へと戻った。
何かを察したらしいゴンさんがすばやく目配せをしてきたが、佐希子は曖昧に笑んで見せるに留めた。
カウンターの中は外のお客が見渡せるのと同じだけ、カウンター席のお客からもふたりは丸見えなのだ。
変な勘繰りや、それによって気分を害させるようなことはできない。