おいしい時間 しあわせのカタチ
「はぁ? ――ああ、そうだろ。そんな名前だった気がする。知ってんの?」
熱燗の準備をしながら、根岸くんは大上さんのほうを見ずに答える。
「夏の試合に出てたじゃんか。つっても準決勝で負けたからテレビに映ったのは一回こっきりだったけど」
なんと、二年生ながらスタメンなのか。
……言われてみれば、レギュラーらしいどっしりとした風格というか落ち着きのようなものが随所に見られるような気もしないではない。(ただ顔つきが大人びているからかもしれないけれど)
佐希子たちが住んでいる県では、夏の予選の間、決められた球場分の試合はすべてラジオ中継されるが、準決勝と決勝に限りラジオと一緒にテレビ中継も行われる。
その方面に明るくない佐希子は、話題がスポーツのことになるとすぐさまゴンさんや丹後くんに助け舟を求めてしまい、ゆえに新聞からつまみ食いした程度の知識しかなく、
もし仮に写真が載っていたとしても、熱心に読み込まないなら見ていないのと同じことで、覚えているはずもなかった。
しかし、大上さんという人は――根岸くんと同郷なら――ここが地元じゃないにもかかわらずやけに早見くんのことに詳しい様子で、
「なんだよその反応。さてはおまえ、試合見なかったな? 夏の間はずっとクリンナップだったんだぞ。たぶん、チーム内では打点が一番多いんじゃないか」
「そんなにすごいのか。――いやそれはいいけど、おまえ、ちょっと声でかいわ。なんか向こう真面目な話してるみたいだからもちょっと……」