おいしい時間 しあわせのカタチ
といつもなら入り口の前で脱いでしまう上着をめずらしく着たまま、出された水に口をつける蒲谷さんを見て、ああそうか、とゴンさんが察したように、
「上の子たちはじいさまたちに預けてきたのか」
「はい、そうなんです。だから今日はお酒は、ちょっと。すいません。ここへは挨拶に寄らせていただいただけで。皆さんにはいつもお世話になってるから。また後日、改めてご挨拶に伺いますね」
「あらそうなんですか。わざわざご丁寧にすみません。だったらせめて待ってるお子さんたちになにかお土産を……」
言いながら、佐希子は根岸くんに目配せをする。
委細承知、とばかりの頼もしい眼差しを返して、根岸くんは厨房に引っ込んだ。
牡蛎飯と、よく煮含めた里芋ならレンジであたためなおしてもらってもおいしく食べてもらえる。
ときどきそうして持ち帰りを所望する人も少なくないので、空の弁当箱は常に店に用意してあった。
「いや、そんな、悪いですから……」
「前にお子さんの好物なんだって仰ってくださったでしょう? うちからのささやかなお祝い、ということで」
「女将がそう言うんだからありがたく受け取っとけ」
「じゃあ、すいません。ありがとうございます」