おいしい時間 しあわせのカタチ
「……後で、大上にはきつく言っておきます。それで、もう二度と来るなっても」
「なにもそこまで言わなくてもいいわよ。当分早見くんもうちには来ないでしょうし、とくに目に余ったのは彼よりむしろ連れの人たちのほうだったわ。大上さんは淡々と事実を述べていただけだもの」
「それでも……!」
「はいこれ」
と遮るように、佐希子は汚れた布巾を根岸くんに渡すと、代わりにガラス片の入った袋を受け取った。
「――いくら敬遠してる相手だからって、無理に友だちを解消する必要もないでしょう。なにかあったときに重宝するのは根岸くんも大上さんもお互い様のはずだもの。親しき仲にあるべき礼儀を思い出させたら、それでもういいとわたしは思う。言い過ぎて傷つくのは根岸くんもそうだと思うな」
「佐希子さん」
「そうだぞ護(まもる)」
とカウンターで包丁を研ぎながら、ゴンさんも話に入ってくる。
「今からじゃあそうそう新しくダチなんてできないんだ。それこそ俺たちみたいな仕事をしてるとな。だからよ、多少思うところがあっても、それを置いて笑い合える余裕があるやつならキープしといて損はねぇ」
「ゴンさん。――そう、ですよね」
「わかったらとっととそれ持って向こう行け。きっちり沸かした湯で消毒しろよ」
多少、持ち直した様子で、根岸くんは厨房に戻っていった。