おいしい時間 しあわせのカタチ
佐希子は奥のゴミ箱に、袋とガラスとを分けて始末してカウンターに戻り、
「いいこと言いますね」
「おまえほどじゃない」
「そうですとも。これでも女将さんですからね」
ゴンさんは鼻白んだ様子で佐希子を一瞥し、それからふっと噴出した。
「――ちがいねぇ」
「早見くんはもうお家に着いたでしょうか」
「車だろ? それに地元が目と鼻の先ならとっくに帰ってんじゃねぇか。今頃もう風呂かもわかんねぇぞ」
「あれくらい名前が浸透してると慣れてるのかもしれないけれど、早いとこ、今日のことは忘れてくれるといいですね」
「大丈夫だろ」
「またそう簡単に」
「だってあいつエースなんだろ? 日常茶飯事のはずじゃねぇか、あんな陰口。それよか、あの坊主にはもっとうんと面倒くせぇ難題があるみたいだしな」
「それってあの3人が噂してたこと? あれって本当に事実なんですか?」
「社長が言ってたからな。そうなんだろう」