おいしい時間 しあわせのカタチ

 厳密に付き合っているという状態ではないけれど、すでに何度か彼女の家に出入りし、息子と顔を合わせてもいる。

 これがまたよく懐く母譲りの素直なやつで、もしこいつが本当に俺の息子だったら、とまで思ったくらい。

 だが――。


(今はちょっと、そんな気分になれないな)


 根岸から引導を渡されたかもしれない事実に、正直、自分でも驚くほど打ちのめされていた。

 ……美砂はいい女だ。

 母親としてはもちろん、女としても。

 しかし子供がいたのではさすがに憚るものがあり、思い立ってすぐ身を委ねることはできない。

 だがそれは美砂のせいじゃない。もちろん篤のせいでもない。

 わかっている。だからこそ、ひとりでいたほうがいいと思った。

 親子の絆に水を差すのは本意ではないから。

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