おいしい時間 しあわせのカタチ

 夜。

 いつものようにアパート近くの定食屋で盛りがいいだけの安い丼を腹に収めた帰り道。

 大上は普段の道を外れて、一路、宅配便の営業所へと向かっていた。母からの荷物を受け取り損ねたのだ。

 えらく持ち重りのするダンボールの中身はだいたい想像がつく。

 母の手製の漬物と、そこで穫れた米と、そこでしか買えない煎餅とかだろう。母の故郷は米所で、ときどき酒も送ってくれる。

 そういえば、最後に母に会ったのはもう去年の正月になるのだろうか。

 今年の休みは父親の家に泊まったからついに会えなかった。


「――あら、そこを行くのはひょっとして根岸くんの?」


 突然かけられた声にびくりとして身を竦ませると、


「驚かせちゃったかしら。ごめんなさい」

 
 珠のころがるような軽やかな声に覚えがあり、この人は、と警戒を解く。

 果たして闇の中から現れたのは、根岸のつとめる店の女将の佐希子さんだった。

 淡い色のダッフルコートに、相反する色合いのマフラーがよく映える。

 見れば見るほど美人だな、とつくづく思う。

 だが、一方では臆すことなく長靴を履いて、真冬だというのに手は剥き出し、引いているだけのママチャリの後ろには海産物が入っていると思われる青色の発砲スチロールの箱が載せられている。

 買出しだろうか、今度こそ?

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