おいしい時間 しあわせのカタチ
「――お一人でいらしていただいても構わないんですよ」
「根岸は歓迎しませんよ」
「そうかしら」
「ええ、きっと」
うーん、と佐希子さんは小娘のような思案顔になる。
「そうかなぁ、そんなこともないと思いますけどね。まぁ、気が向いたら顔を見せに来てくださいな。その頃にはほとぼりも冷めているはずですから。――今ちょっと急いでいるので、これで失礼しますね」
「――ああ、ちょっと待ってください」
大上は唐突に思い出して、ダンボールを縁石の上に載せた。
そして躊躇なくガムテープを剥がし、無造作に中身をかき回して目当てのビニール袋を引っ張り出す。
水が洩れないよう何重にも包まれたビニールの奥にはありふれたタッパーと密封袋がそれぞれかちこちに凍りついた状態で収まっている。
そのタッパーの方を引き抜いて、軽く蓋を開け、かすかなにおいを確認した後、大上は、はい、とそれを佐希子さんに渡した。
「昨日の詫びにって、これを根岸に渡してください。見てもらえればわかりますから」
「いいの? ご家族からの送り物みたいだけど」