おいしい時間 しあわせのカタチ
「学生の頃、あいつがよく俺の弁当から盗み食いしてたやつです。今でも好きかはわからないけど、俺にできることは今はこれだけだから」
佐希子さんはタッパーをためつすがめつしたあと、たしかに引き受けました、とそれをそっと前のカゴに入れた。
今にも自転車に身体を持っていかれそうな危うげな背中を見送って、大上もふたたびアパートへの道を戻り始める。
つま先の向きを変えたとき、またケーキの感想を聞くのを忘れたと気づいたが、振り返った先に佐希子さんの姿はなかった。
そしてその夜、もう二度とないだろうと思われた相手から、一通のメールが届いた。