おいしい時間 しあわせのカタチ
「わたしまで行っていいの? お呼ばれしてないのに」
「勝手に呼ばれればいいじゃないですか。そういうの、得意でしょう?」
「――まぁね」
お店が定休日の今日、佐希子は根岸くんに誘われて、大上さんがつとめている菓子会社を訪れていた。
といっても会社自体に用があるのではなく、会社の一階部分を利用して運営しているパーラーで大上さんと会う約束になっているので、付き合って欲しいと言われたのだ。
『タッパーを返しに行くだけです。でもそんなキラキラしたとこ、男一人で入れないから』
大上さんが一緒なら平気じゃない? と言いかけたが、そこが一番の問題ではないことくらい馬鹿でもわかる。
だから佐希子はそれが二人きりになりたくない言い訳と知りつつも、二つ返事で聞き入れた。
どういう形であれ、もう一度大上さんに会う気になってくれたのが、佐希子は純粋に嬉しかった。
「わぁ、宝石みたい。どれも美味しそう。根岸くん根岸くん、お互い別々の買ってシェアしましょう。イマドキの女子高生はそうするんですって、知ってた?」
「はいはい、はしゃがないはしゃがない。てかそんなの女子高生じゃなくたってしてますよ。ああ、そうそう、請求は営業部の大上達樹でお願いします」
「――かしこまりました」
戸惑うような、でなければ根岸くんの言葉を反芻するような、不自然な一拍の間があって、きりりとした目鼻立ちの店員さんは頷いた。