おいしい時間 しあわせのカタチ


「――悪い、まずいときに来ちゃったか?」

「いや、全然。休憩取れなくて昼飯食べ損ねちゃったから、どっかで抜け出そうと思ってたんだ」


 そう言うと、大上さんはおもむろにコンビニ袋をテーブルに上げた。中身は梅とおかかのおにぎりだ。


「おいおい、それが昼飯なのか?」

「そうだけど? だいたいどいつもこんなもんだぞ。所帯持ちとかじゃない限りな」

「バランス悪いなぁ。だからそんな顔色なんじゃないか」

「よくないか?」

 
 大上さんは自らの頬に触れ、外とを隔てるガラス張りの壁に首を向ける。


「――たんぱく質は大事なんだ。ほら」


 つっけんどんに言いながら、根岸くんはトートバッグから、先日大上さんに漬物をもらったときのタッパーを取り出した。

 
「なにこれ」

「聞く前に開けてみろって」

「……あったかい。おまえが作ったのか? ――うわぉ」


 蓋を取れば、タッパーからはたちまち甘辛い匂いが溢れ出て、ケーキを前にしながらも現金なほど唾が出てくる。

 根岸くんが大上さんのために作った、沢庵漬けのアレンジ料理だ。

 輪切りにされたしなしなの沢庵に一分の隙間もなく染み込んだ醤油がいい。

 アクセントの鷹の爪の赤も食欲をそそる。

 そこへさらに、豚バラの艶やかな脂がコーティングされれば言うことなし。いくらでも白飯が進む。

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