wish
友香は端のほうから顔をのぞかせ

「私、言ってないよ?」

と言った。

「うん。だからさっきごめん」

友香が言ったのではないことが分かり、昇は安心した。
なぜかは分からないけれど。

完璧に授業が始まってしまった時間になり、授業はさぼることにした。
それから、友香のマシンガントークが繰り広げられた。
授業も終わるかという頃に友香は思い出したように言う。

「そうそう、文化祭ね、合唱部の発表があるんだけど、私ソロ歌うことになったの。見にくるよね?ってゆうか見にきてね」

言った友香の顔はキラキラと輝いているように見えた。
夢をみることはそんなにいいことなのか?
と、またつい考えてしまいそうなほどだ。

「ねー、来る?」

一瞬間をおいて答える。

「…気がむいたら」

前の自分だったら、面倒だし「行かない」と返事をしていただろう。
不思議な気分だった。


また、前のように友香と時間をずらして教室に戻ると、誠が冴えない顔でこちらを見た。
その視線はすぐに外されたが、なんだか気になる視線だった。

< 34 / 218 >

この作品をシェア

pagetop