wish
変化
昇降口の上に寝転んだまま、
昇はチャイムが鳴るのを聞いた。
1日の授業がすべて終わった音だ。
少し考えてから起き上がり、梯子を使わずに飛び降りる。
今日は、友香と誠に出会わないようにしなければ、
そう思いまわりに注意しながら教室に戻った。
教室にはまだ、ちらほらと生徒が残っていたが友香と誠の姿は見えない。
小さく安堵の息を漏らし、自分の席に向かう。
何事もなく、目的の場所に行けると思ったが甘かった。
「ちょっと、笹木くん」
昇はその声のほうに顔を向ける。
向けなくても大体相手は想像できたが。
「何?」
声をかけてきた恵利子に問う。
「友香の、様子が少しおかしかったんだけど、何か知ってる?」
「なんで俺に聞くの?」
「え、なんとなく。本当に笹木くん関係ない?」
疑わしげに見てくる恵利子の顔から目をそらし、
「…あぁ」
と言ってようやく自分の席に辿り着くことができた。
カバンに荷物を詰めて、足早に教室をあとにする。
いつ、友香と誠が現われるやもしれない。
それに、また恵利子から問いただされる恐れがあった。
この前のこともあったし、恵利子には少し苦手意識を持った。