夢が醒めなくて
「六角獄舎も近いけど、行く?……あ。」
義人氏の携帯が震えた。
「恭匡(やすまさ)さんや。はーい。……え?」
電話に出た義人氏の顔色が変わった。
何かあった?
黙って義人氏をじっと見つめた。
「わかった。わかったから、落ち着いて。恭匡さん!大丈夫やから!……そんな、ヤワじゃないですよ。ただの家出ですよ、いや、痴話喧嘩?」
受話器の向こうから確かに取り乱してる声がしてる。
あの穏やかそうな恭匡さんが、わめいてるの?
「わかりました。京都駅で待ってみます。え!?……はいはい。新幹線ホームで。」
義人氏は電話を切って、ぐったりとハンドルに頭を沈めた。
「由未お姉さんが、家出されたんですか?恭匡さんと喧嘩して?」
来週、結納なのに?
あー、マリッジブルーってやつかな?
「なんか、そうらしいわ。携帯も持たんと飛び出したらしくて、恭匡さんがめちゃ怖がってる。でも誘拐じゃないなら大丈夫やろ。子供じゃないんやし。……まあ、とりあえず新幹線ホームで確保できるかもしれんし、行ってくるわ。希和はタクシーで帰り。お父さんとお母さんには内緒な。」
義人氏は私をタクシーの運転手さんにタクシーチケットと千円札を付けて託すと、京都駅へ向かった。
タクシーで帰宅すると、お母さんがぷんぷん怒っていた。
「希和ちゃん、大丈夫やった!?義人に途中で放り出されたんやて?ひどい子!もう~~~~。希和ちゃんが来てくれてから、夜遊びも外泊もなくなってたのにぃ。」
夜遊び?
外泊?
……でも確かに、義人氏は毎日私を送り迎えしてくれたし、受験勉強に続いて英語を教えてくれてて……ずっとそばにいてはった気がする。
そうか。
私がココに来るまでは、そんなに頻繁に遊び歩いてたんだ。
知らなかった。
「大丈夫です。ちゃんとタクシーで帰らせてもらいましたから。」
義人氏が悪者にならないようにそう言っといた。
その夜、義人氏はなかなか帰って来なかった。
私は23時にはいつも通り就寝した……のだけど……
悪夢を見た。
まるで白黒映画のように、色彩のない世界だった。
冷たい……手足が冷たくて、重くて、石のように動かない。
誰かわからないけれど、ヒトの気配がする。
振り返ると、木の台に生首が並んでいた。
恐ろしくて叫びたいのに声が出ない。
苦しい。
胸がかきむしられるような想いに手を挙げようとして……気づいた。
私には手どころか、身体がなかった。
……いつの間にか、私も首だけの姿になって台に転がされていた。
そうか。
私も処刑されたのか。
こんなはずじゃなかったのに。
ああ、苦しい。
いつまでここにさらされていないといけないのだろう。
早く成仏したい。
……たまに通りかかる僧侶が熱心に読経してくれると、何となく楽になる気がした……
義人氏の携帯が震えた。
「恭匡(やすまさ)さんや。はーい。……え?」
電話に出た義人氏の顔色が変わった。
何かあった?
黙って義人氏をじっと見つめた。
「わかった。わかったから、落ち着いて。恭匡さん!大丈夫やから!……そんな、ヤワじゃないですよ。ただの家出ですよ、いや、痴話喧嘩?」
受話器の向こうから確かに取り乱してる声がしてる。
あの穏やかそうな恭匡さんが、わめいてるの?
「わかりました。京都駅で待ってみます。え!?……はいはい。新幹線ホームで。」
義人氏は電話を切って、ぐったりとハンドルに頭を沈めた。
「由未お姉さんが、家出されたんですか?恭匡さんと喧嘩して?」
来週、結納なのに?
あー、マリッジブルーってやつかな?
「なんか、そうらしいわ。携帯も持たんと飛び出したらしくて、恭匡さんがめちゃ怖がってる。でも誘拐じゃないなら大丈夫やろ。子供じゃないんやし。……まあ、とりあえず新幹線ホームで確保できるかもしれんし、行ってくるわ。希和はタクシーで帰り。お父さんとお母さんには内緒な。」
義人氏は私をタクシーの運転手さんにタクシーチケットと千円札を付けて託すと、京都駅へ向かった。
タクシーで帰宅すると、お母さんがぷんぷん怒っていた。
「希和ちゃん、大丈夫やった!?義人に途中で放り出されたんやて?ひどい子!もう~~~~。希和ちゃんが来てくれてから、夜遊びも外泊もなくなってたのにぃ。」
夜遊び?
外泊?
……でも確かに、義人氏は毎日私を送り迎えしてくれたし、受験勉強に続いて英語を教えてくれてて……ずっとそばにいてはった気がする。
そうか。
私がココに来るまでは、そんなに頻繁に遊び歩いてたんだ。
知らなかった。
「大丈夫です。ちゃんとタクシーで帰らせてもらいましたから。」
義人氏が悪者にならないようにそう言っといた。
その夜、義人氏はなかなか帰って来なかった。
私は23時にはいつも通り就寝した……のだけど……
悪夢を見た。
まるで白黒映画のように、色彩のない世界だった。
冷たい……手足が冷たくて、重くて、石のように動かない。
誰かわからないけれど、ヒトの気配がする。
振り返ると、木の台に生首が並んでいた。
恐ろしくて叫びたいのに声が出ない。
苦しい。
胸がかきむしられるような想いに手を挙げようとして……気づいた。
私には手どころか、身体がなかった。
……いつの間にか、私も首だけの姿になって台に転がされていた。
そうか。
私も処刑されたのか。
こんなはずじゃなかったのに。
ああ、苦しい。
いつまでここにさらされていないといけないのだろう。
早く成仏したい。
……たまに通りかかる僧侶が熱心に読経してくれると、何となく楽になる気がした……