朱色の悪魔

「魁、そろそろ」

「…分かった」

5分なんかあっという間。繋いでいた手を名残惜しく離していく。

と、不意に手に不自然な圧を感じて手を見ると、ピクリと朱音の指が微かに動く。

「朱音?…朱音!?」

「っ!?」

呼び掛けると、それまで微動たにしなかった朱音の表情がうなされているかのように眉をひそめ始める。

兄さんが何かを準備しているのかあちこち駆け回り、モニターがけたたましく鳴り始める。

「っ…か、…い……」

うわ言のようにかすれた声。それでも、2か月ぶりの声に勝手に目頭が熱くなる。その声が俺の名を呼んだ。

不意打ちも大概にしろ…!

「ここにいる!目開けろ!朱音!!」

握った手を強く握る。

ふっと朱音の顔から表情が消える。だが、瞼が震えるとそれがゆっくりと上がり、赤と黒。2つの瞳が俺の姿を映す。

「朱音…」

「………………う……さい」

「は?」

おい、なんで起きた瞬間にうるさいとか言われなきゃなんねぇんだ?

涙なんか吹き飛んで、ムカついたから朱音頬を摘まんで横に伸ばす。

「ん~…」

「何がうるさいだ?お前、どんだけ心配したと思ってんだ?あ?」

「魁、ちょっと退いてくれる?」

ッチ。家帰ってきてから覚悟しとけよ。このアホ…。

兄さんに場所を譲って、そこら辺にあった椅子に座る。
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