朱色の悪魔
気がついたら、そこにいた。
いや、私の最古の記憶がそこにいたことから始まっている。
冷たい、天板の上。そこに寝かされている私は、言葉通りの脆弱な子どもだった。
大量の薬と栄養剤、あらゆる機械がなければ簡単にあちらへ逝ってしまうような、脆弱な子ども。
だが、それを彼らは必要としていた。
朱色の悪魔が適合する兵器を作り出すために。
「ーーーーーーーー」
「ーーーーーーーー」
残念ながら、彼らが口にしていた言葉を、私は、覚えていない。
言葉というものを理解していなかったのだから、当然だろう。彼らが何を語り、何を私にしたのか、私には分からない。
ただ、変化は急激に現れた。
いつも私を管理していた、全身を白で包んだ奴が手にしたのは、余りにも禍々しい赤だった。
どう、抵抗できたというのか。
彼らはそれを私に施した。
走ったのは激痛。血液の流れに乗った赤はあっという間にこの身を犯した。
その代償が左目と髪に現れた。左目は赤く染まり、髪も紅くなる。
周囲に立った人間たちの歓声が響いたのは、恐らく間違っていない。
彼らは長年の研究の成果をようやく手にすることができたのだ。それを、喜ばない研究者などいないだろう。