朱色の悪魔

牢に布団が運び込まれた。

その間、研究者はご老人の牢に蹴りを入れていた。

「じいさんさぁ。朱と仲良くなっちゃうなんて酷いじゃないか。僕にもなついてくれてないのにさぁ」

本当に申し訳ない。

動けないからという理由で首に枷をつけられた状態のまま牢に背を預けた格好で座り込んでるだけ。

動けたらあいつの無防備な背に襲いかかってやんのに。

布団が敷き終わり、他の研修者が出てくる。

「さーてと。朱、ちゃんと大人しくしてるんだよ?」

そんなこと言いながら牢に戻される。

大人しくって動けないんだってば…。

布団に寝かされると研究者たちは去っていく。

ドアが閉じる音がして、ようやく息を吐いた。

「お嬢さん、大丈夫かい?」

「あ、はい…。それより、すみません」

「いいんだよ。何かあったみたいだね」

「あ…えっと、妊娠したみたいです」

そう仕向けられたけど…。

ご老人の目がまん丸くなる。
< 214 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop