朱色の悪魔

「あーかーねー。何だ、起きてるじゃねぇか」

「…おは、よ」

「はよ。朱音はブレザーの方が似合うな」

今度からブレザーの学校に絞るかなんてボソッと付け足した言葉に、何回転校させる気なのか少しゾッとした。

部屋に入ってきて、私の頭をポンポンってした少年は満足そうな顔で笑う。

「兄貴たち待ってるから、早く来いよ」

そんな言葉を残して部屋を出ていく。

それを見送って、姿見をまたくるりと回転させて裏向きにする。

スクールバックを掴んで、とりあえず洗面所に向かう。

長い廊下。あちこちにある同じ柄の襖が並ぶ。

「朱音さん、おはようございます」

「おはよ…」

「お嬢、おはようございます!」

「…はよ」

次々に現れる厳つい男たち。

最敬礼、しなくていいのに。

何回かすれ違って、木製の開き戸が2つ。

右側を開けて、中に入ると洗面台が2つ並んでる。

左側の洗面台の前に立って、うさぎのマークが書いてある引き出しからタオルと櫛を取り出した。

その2つにもうさぎのマークが書いてある。

手始めに顔を洗って、寝癖のついた髪を梳かす。

肩甲骨くらいの長さの髪は、毛先が跳ねてそっぽを向く。

それを無視して、櫛を引き出しに戻して、タオルはやっぱりうさぎのマークがついてるカゴに放り込んだ。
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