奪うなら心を全部受け止めて
「...り、...か、お、り...佳、織」
ん、夢...。
...優朔?優朔なの?...優朔の香りがする。夢でも香り、感じられるの?
あぁ...この香りに抱きしめられたい。私の全てをこの香りで包んで欲しい。優朔…。
「...佳織」
なんて夢...。声が聞こえる。まるで側にいるみたいに。…幻聴?耳に確かに聞こえる。
優朔、居るの?夢でもいい、抱きしめて...。お願い。腕を伸ばした。
う、...ん。
脇に腕が差し込まれて背中に回された。強く抱きしめられた。抱き起こされる感覚がする。
「佳織...目を開けてごらん」
優しい声。聞きたくて堪らなかった声が聞こえる。夢じゃない、かも。でも...。怖い。
「佳織...頼む。目を開けて俺を見てくれないか...」
首を振る。声を出し、応えた。
「嫌。...居なくなるもの。...目を開けたら消えてしまう、...嫌。夢なら見ていたい、感じていたいの」
「馬鹿だな...消えたりしない」
ん。唇が優しく触れた。
「...幻じゃない。温かいだろ?...佳織。目を開けて、俺を見てくれ。さあ…」
う、ううっ、うう、...。
「優、朔。優朔...」
瞼をゆっくり開けた先、居た。消えてない。居る。ずっと会いたかった人が居る。
「優朔、優朔、優朔...。う、うわ〜ん、う、うっ」
「佳織。今日が今までで一番子供の佳織だな。...ただいま」
「うっ、...嫌。うっ、お帰りなんて、言ってあげない。嫌、嫌」
「ごめん佳織、ごめん。…...厳しいなぁ。これでもかなり詰め込んで早く終わらせたんだけどな...。ごめん。...長い間会えなくて。本当にごめん。はぁ...会いたくて堪らなかった…」