奪うなら心を全部受け止めて
「...いいの?こっちに来ても、もういいの?
大丈夫なの?」
「いいから来たんだ。最近の佳織はずっとここに居るからって、能が教えてくれた。だから、夜中でも連絡せず、ここに来たんだ」
「奥様は?いいの?」
「ああ、少し大変だったんだ。悪阻がかなり酷くてな。全く食べられなくなって水分も摂れなくなったんだ。衰弱して母体も赤ちゃんも危ないからって入院した。善くなって退院してから、暫くは順調だったんだ。そしたら、次は中毒症になってしまった。
血圧が高くなって、また入院しなくちゃいけなくなった。今はもう改善したから大丈夫だよ。善くなった。
退院して今は家に居られるようになったし、安定している」
「赤ちゃんは大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。...何とかな。生まれてくる時は少し小さいかも知れないけどな、大丈夫だ」
「そう。ほぉ...。奥様も赤ちゃんも大丈夫なら良かった」
あぁ佳織、お前は...なんて。
「佳織...有難う」
「え」
「ん?...有難う、佳織って言ったんだよ。有難う、佳織」
「ねえ、優朔?」
「ん」
「赤ちゃんは男の子か女の子か解ってるの?」
「...うん、解ってるよ」
「聞いてもいい?...男の子?」
「ああ、そうだ。...よく解ったな?」
「...何となく、そんな気がした。それに当たる確率は高いでしょ?」
「外す確率も高い、だろ?」
「んー...。元気に生まれて来るといいね」
「ああ、有難う。なあ佳織?...疲れてるか?」
「...どういう意味?正直、精神的にも肉体的にも疲れてるけど?聞く方が間違ってない?」
「そうだよな。...そうだよな」
解っている。...聞く事でもないんだが。...。