奪うなら心を全部受け止めて
「俺も誰にも言ってない。言うような事じゃない」
ショウが顔を寄せて来る。
「……何だよ、いきなり」
「ばか、耳貸せ、耳」
「ぁあ?…何だよ」
「グフフッ」
「わっ、ばか。気色悪い笑いすんな。んぁああ!もう。息が掛かった…」
「悪い、つい」
「…つい、の意味が解らん。で?」
「まあまあ…、あのさぁ、高木先輩の幼なじみなんじゃないかなぁ」
「は?なんで?わざわざ」
「味方に出来る敵は、多い方がいいから?じゃないか?
だから敢えて噂を流したとか」
「……。解んないだろ?それこそ勝手な憶測だ」
「だよな。…すまん」
「別に、俺に謝られても。謝るならその幼なじみの人に謝れ」
「そうだよな。しかし、実際返事はどうなったんだろうなぁ」
「…知らないよ。だけどクラス全体、女子がざわついてないから、まだなんじゃないのか?」
「お、千。お前には解るのか?女子の間で事あるごとに漂うダークなオーラとか」
「オーラって…そんなもん、見える訳ないじゃんか…。あるかどうかも。うちのクラスにだって、先輩の事密かに思ってる子、居るだろ?居るんだろ?だけど、別に何も変わりないじゃん」
「解んねーぞ?見えるとこでは猫かぶってて、裏ではコソコソ企んでるかも知れないじゃん」
「俺には、そこまでは解んないよ。ただ雰囲気だけで思っただけだ」
「ん〜、難しい!ま、平和である事を願うよ、な?」
「ああ、恋愛でやっかむのとかマジ勘弁だよな…」
「よ!色男。さては色々、泣かせてるね〜。経験がモノを言う、てか?」
「アホかショウ。泣かせるとか、そんな経験ないから」
「へぇ〜…。中学でも、いや、幼稚園、いや、生まれた時から、一杯、女子を泣かせてるかと思ったけど?」
「…。アホ。そんな訳あるか。もう、面倒臭い、どけ」
近くにあった顔を押した。わざとぐらついた。
「おっと、あぶね。まずさ、この二重の切れ長の眼だろ?綺麗な目だよな。そして、整った眉だろ?なんもしなくてこの眉だもんな、いいよな~。
スーッと高い鼻だろ?形のいい唇だろ?そしてツルンとしたこの白い肌。はぁ…どうなったらこうなる?一つでいい、俺にくれ」
「…知らないし。親とか先祖に聞いてくれ。
俺の努力でも何でもない事だ」
「はぁ、羨ましい…。やっぱ千。お前、千景ちゅわんだったら良かったのにぃ。
お前だったら馴れてるから、綺麗な顔でも照れずに済むし。あんな事だって、こんな事だって…グフフッ」
「ばっ…、止めろ…。馴れてるとかも言うな、誤解される。…何考えてんだ。大体、それは現時点だから言ってるんだ。最初から女だったら、どうだったんだよ。こんなに近かったのかよって話だ。……いいか、俺で盛るなって言っただろうが…、鳥肌が立つ!…離れろ、離れろって」
「…冷たいのね、千景…」
「今、千景って呼ぶな。変な風に聞こえる。
それに。顔を両手で包むのも止めろ、今すぐ止めろ。早く…離せよ…、手」
「ガハハッ。はぁ、面白かった。最近このパターン、嵌まるわー」
「……」
「出た!俺の黙らせ業、天才的〜」
鬱陶しい…つうの。