奪うなら心を全部受け止めて

｢ん〜、…何でだろうね。あ、知ってる？誰かに言われた？｣

｢え？えっと…｣

あぁ、俺は高木先輩ほど知られてないか。

｢入学式の時、谷口さんが入って来ただろ？｣

｢入場の時？ですか？｣

｢そう。その時、俺ら在校生は、ちょっとざわついたんだ。俺が言うのも変だし、何だか自意識過剰？みたいだし、言われる谷口さんは迷惑だろうけど。
クラスのやつらとかがね、何て言うか…、谷口さんと俺が似てるって言って、悪ふざけになったんだよ。あ、顔のことだけど。
実際どうなんだか…、俺は解らないけど、ごめんね？
それからは事あるごとに、まぁ、俺とショウの間でなんだけど。
俺が女子だったら話で盛り上がってて。本当、ごめん。知らないとこで名前出されてたり、嫌だろ？｣

｢大丈夫です。仲城さんなら。あ、お友達のショウさんも｣

｢本当？…で、なんだろうな…、親近感みたいなの、勝手に思ってるのかも。
だから放っておけなかったのかな…。よく解んないね｣

｢…有難うございます｣

｢確か退場の時、目が合った気がしたんだけど、気のせいかなぁ？｣

｢あー、見てたかも知れません。私、視力あまり良くなくて。見てるつもりなくても見つめている事がよくあって。
多分ですけど、仲城さんは背が高いから見てたと思います｣

｢それだけで？｣

｢はい。…私、背の高い人、好きなんです。だから｣

…それだけじゃない。

｢なるほど、理想のタイプとかで言うやつね｣

｢あ…はい。理想のタイプです｣

やっぱり。近くで見ると綺麗な顔…。

｢良かったね。高木先輩も、背、高いし、良かったじゃん｣

｢あ？え？えっと…、そうでしたっけ？…｣

｢ハハハッ。えー、高いよ？
あんな近くで話してたのに。…そうかぁ。告白されて緊張して、記憶に残らなかったのかもなぁ｣

｢…そうかな。…そうかも知れませんね。…記憶にないかも…｣

｢大丈夫？まさかとは思うけど、顔も解んなくなったって事、ないよな？｣

｢えー、流石にそれはないです、大丈夫です。
近くでハッキリ見ましたから｣

｢男前だったろ？｣

｢…はい、そうですね。ドキドキしました。少女マンガに出てくるような人が本当に居るんだぁと思いました｣

｢うん、うん。そっか。あー、ヤバイ。そろそろ解散しようか。
元気になったようだし。俺もショウ、待たせたままなんだ。ハハ、後で目茶苦茶文句言われる。
余計な事して悪かったけど、俺の言った事、忘れるなよ？困った時、必ず我慢せず話すんだぞ、先輩に｣

｢はい。有難うございました｣

｢じゃあな。あ、俺もショウもⅡ組だから。プレハブな。んじゃ、気をつけて帰れよ｣

くしゃくしゃって頭を撫でて、手を上げて階段を駆け降りて行った。
……なんでだろう。初めて話すのに…。
こんなにじっくり話して…。ドキドキしたけど凄く自然。不思議ね。…仲城さん。