奪うなら心を全部受け止めて

名前は奥様が付けたと言ったな。...どうだか。
会長、社長には『朔』がついている。
だけど、この子は優朔の子ではない...。
繋がりはないから朔はつけない、そう思っていた。
それとも名前は繋げた方がいいという判断か。

優朔の子供の名前には、『朔』がつけられた...。
...俺が立ち入ることではない、か。


会長室を訪れた。

コンコンコン。

「はい」

「松下です」

「入れ」

「失礼します。...報告書、お持ちしました」

重厚なデスクに茶封筒を置いた。

「...ああ。手間を掛けさせたな」

「いいえ。それでは失礼致します」

ドアノブに手を掛けた。

「松下。見たか?」

何故声を掛けられたのか不思議だった。

「申し訳ありません。書類の確認で一応見ました」

「どう思った」

どう思ったとはどういう意味だ。会長は見なくても中を知っているのか。
事前に連絡があったのか?こっちから連絡したのか?
それとも報告内容自体をを疑っているのか...。
俺が内容を操作したとでも言うのか。
なんだ、どういう意味で聞かれたんだ。

「該当するであろう者に当たりませんでした。調査不足です。他に居るであろう人物が特定できませんでした。
...ご報告できる内容がありませんでしたので、意にそぐわない物になりました」

「松下。意味はあるんだ」

「はい?そうおっしゃいますのは?」

「愛人と言われる者の中に該当者は居なかった。それが意味のある事だ。
...子供はA型だったな」

「はい」

A、B、O、ABだけでは解らない。
親子鑑定をするにはDNA...遺伝子レベルの話だ。
解っているだろうに...何故わざわざ言う。


「優朔もAだが、私もAだ。いいぞ、もう下がって。ご苦労だったな」

...わざわざ...何が言いたい...。可能性の一つの例えか。

「はい。失礼致します」

閉じたドアの前で暫し動かなかった。

...そうか、…そういう事か。…フ。
因みに俺もAだけど...。
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