奪うなら心を全部受け止めて
「能…」
「誤解するな。邪な気持ちではない。妹みたいに思ってるだけだ。だから放って置けない」
「…」
「どうやらパターンを読まれているんじゃないか?」
「……どういう事だ」
「…単純な事さ。…マンションに来る時は鍵は財布の中。それ以外は鞄の中の何処か。違うか?」
「…いや、違わない。その通りだ…。…迂闊過ぎたな。まさか干渉してくるとは思わなかった。…くそっ」
「ああ…、迂闊だな、優朔。きっと場所が違っているときのお前の行動を把握したんだろう。…恐い人だな。
マンションの鍵を換えようと思う。試すような事して奥様には悪いけど、その前に確認してみる」
「試す?」
「ああ。優朔と佳織さんが会う日、実際は会わない日を作ってくれ。…貴重な日を潰させて悪いんだが。俺はその日、部屋で待機しておく。
紛れもなく、あの部屋は俺の部屋だ。俺が居てなんら不思議じゃないだろ?
…その日を挟んで前後の日を含めて、奥様が来るかどうか確認してみる。
…いいか?」
「罠をかけるという事か?」
「罠?いや、俺が俺の部屋に居るだけだ。そうだろ?」
「…そうだな」
「対処は早い方がいい。度を過ぎた行為が起きる前に。…警察沙汰になるような事、あってはならない。プライドの高い人は、自分のしている事、…判断が出来なくなる怖れがある。そこまでならないうちに早目に止めた方がいい。
…まだ解らない事だけどな」
「ああ。…佳織に何かされない内に。
しかし、…あいつは、…識子は識子で自由にしてる。相当、自由にしてるはずなんだ。俺は一切口出ししたことはない。なのに、何故、干渉する…」
「その自由は満たされていないモノだからじゃないのか?愛のない愛人を何人作っても結局は虚しいだけだ。
だから、余計…愛されてる人、佳織さんが…自分の夫と、と思ったら、憎くなった。そうじゃないかな?立場は妻だからな。女としてのプライドがそうさせるんじゃないかな」