片道のRe:
「……え?」


一瞬、店内に流れるジャズが消えた。

否、きっと流れていたのだけれど、耳が音を拾えないほどの静かな衝撃が、全身を伝っていた。


「あ、大丈夫。生きてるよ!」


少しおちゃらけたように笑ったリノは、グラスを持ち上げて赤色を喉に流し込んだ。


「タケト、理系の国立大目指して頑張ってたんだけど、落ちちゃって。しゃあない、1年浪人して再チャレンジだ! って時に、発病」


リノは淡々と、それも微笑みながら語るから、私はどんな顔をしていいのか分からず、握ったフォークは固まったまま。
次の言葉を待つ心臓は、ドク、ドクと緊張の音を立てる。


「急性骨髄性白血病、っていって。熱が出たり色んなとこに痛みが出たりとかして、おかしいなと思って検査したら、そう診断されたんだって」


リノはもう一度グラスを持ち上げると、くるくると回して赤色を弄ぶ。

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