ロールキャベツは好きですか?
部長に指定された会議室で資料をめくりながら待っていると、5分後にやってきた。
優雅な足音が聞こえたかと思うと、2回のノックのあと、扉が開く。
「待たせたな。渡邊」
「いいえ。私も今来たところです」
さりげなさを装っていた部長だったけれど、カチャという施錠の音は嫌に大きく響いた。
一瞬、身の危険を感じて、眉を潜めたが、これは仕事だ、と自分を奮い立たせた。
笑え。仕事だ。
あくまで相手は上司なのだから、機嫌を損ねてはいけない。
「最近どうだ?」
それは仕事に関してなのか、プライベートに関してなのか……。
どっちでも構わないんだけどね。
プライベートなんて教えてやるわけないんだから。
「多忙の一言につきます」
「へぇ。クリスマスは予定あるの?」
「ええ。取引先との飲み会が」
正しくは、祥吾くんとの飲み会ですが。
まぁ、飲み会っていっても、お決まりの『郷』でちょっと乾杯。
実はクリスマスプレゼントはもう用意してある。
「相変わらず忙しいね。渡邊は」
「部長には負けますよ。さ。打ち合わせさっさと終わらせましょう」
私の合図で部長もようやく、資料を手に取った。