ロールキャベツは好きですか?

着信を知らせる電子音が静寂をかき乱した。

ビール缶の隣に置かれたスマートフォンが震えている。

表示されていた『田島祥吾』の名前に伸ばしかけていた手が止まる。

━━━祥吾くん……。

避けていた理由を訊かれるだろうか。
訊かれたら……なんて答えるの?

このまま、着信を見て見ぬふりすればどうだろう?
でも、いつまでも着信拒否するわけにもいかない。相手は仕事仲間なのだから、職場に行けば、顔を合わせることになる。

「……」

結局、理由を訊かれないように祈りながら、応答した。

「もしもし」

『あ、もしもし。祈梨さん?』

「仕事終わったの?ごめんね。先に帰っちゃった」

『あ、別にそれはいいんですけど。松谷課長から具合悪そうだって聞いたから』

……忍、祥吾くんに伝えたんだ。

「大丈夫。忙しかったから疲れが溜まってただけ」

右手でスマートフォンを持ちながら、左手は靴下の編み目を指でなどっていた。

毛糸はひんやりしている。

『そうだろうと思いました。あ、さっき駅前で洋平さんご一家にお会いしましたよ』

杏に会えたのが嬉しかったのか、心なしか祥吾くんの声が弾んでいる。

『洋平さんが今日出張から帰ってくる予定だったので、駅まで杏ちゃんと真さんでお迎えに来たらしいです』

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