ロールキャベツは好きですか?
祈梨さんは助手席に座ったまま、窓の外の暗闇を見ている。
だけど運転してても時々視線を感じる。何か伝えたくて、でも言葉にならなくて、勇気が出せずに口を閉ざしてしまう、そんな感じ。
「……祈梨さん。寝ていてもいいですよ」
こちらも焦れて、祈梨さんに声を掛けた。
その言葉に反応して彼女の視線が俺に突き刺さる。
「……運転してもらってるのに、悪いわ」
「いいから、寝ててください。明日もフル回転で仕事あるでしょう」
どんなに寝不足でも疲れていても、仕事は待ってくれない。今、課長が休みをとっているから余計にだ。
課長代理としてそのしわ寄せは全て祈梨さんに回ってきている。
「眠れなくても、目閉じて身体休めてください。祈梨さんまで倒れられたら、うちの課はパニックですよ」
あながち冗談でもないから、真剣な口調になると、祈梨さんは渋々、目を閉じて、ガラスに頭をもたせかけた。
微かに唇が開いて、祈梨さんは言葉を紡ぎ出す。
「……祥吾くん……ごめんね」
「何に謝ってんですか?それ」
「……いっぱい迷惑かけちゃった」
「人間ですから。迷惑かけ合うこともありますよ」
彼女は何も答えてくれないから、俺は更に口を開いた。
「もう一回ゆっくり話し合いましょう。……これからのこと」
もちろん、簡単には別れてはあげないけれど。
「……うん」
あなたから話を聞かなくちゃいけない。
あなたが授かった命のこと。
あなたが子供を産めないということ。
ちゃんと教えて。
現実と向きあわせて。