ロールキャベツは好きですか?

……どうする?渡邊主任。

みんなの視線が祈梨さんに集まった。その中で最も切実なのは、クビを切られる寸前の、双山部長だ。

昔好きだった男に情けをかけるのか……。

祈梨さんは、ニッコリと胡散臭い笑顔を、双山部長に向ける。

「退職までは求めません」

祈梨さんが言い切った途端に、部長の顔が安堵を浮かべた。

「ただし、営業部から外してもらいましょうか。仕事がやりにくいので。赤字を出してはまずいですからね」

ありがたい提案である。ここまでリアルに双山部長の最低な行為を見せつけられては、尊敬もできやしないし、モチベーションも下がる。

ただし、ありがたくはないのは、双山部長のほうで……。

「渡邊。本当に悪かった!頼むからそれだけは勘弁を……」

見事なまでに狼狽えて、むしろ、惨めである。

俺はよく知らないが……まぁ、そこそこ営業部では活躍していた男だったのだろうが……ここまで醜態を披露してはもう、その面影はない。

「だったら、大人しく退職しますか?」

「え……いや……あの……」

「移動か退職か。どちらか好きなほうを選んでください」

祈梨さんのニッコリスマイルはどこまでも冷たく、容赦ない。

「大人しく退職したほうがいいんじゃない?どこの部署に行っても、噂を聞いた女子社員から毛嫌いされると思うし」

容赦ない女は俺の隣にもいた。あろうことか、この女は自分の婚約者に退職を勧めたのだ。

「……園華……」

名前を呼ばれた向井も、祈梨さんと同じくニッコリと笑った。

この二人、なんか、似てる。

「向井。思うんだけど、ここまでバッチリ浮気現場に踏み込んどいて、婚約破棄はしないの?慰謝料貰えるぞ」

返事はまぁ想像できたけれど、一応聞いておく。

「しないわよ。もう式の招待状、送っちゃってるし。旦那の弱みはひとつでも多く握っているほうがいいですし。ね?双山さん?」

話を振られても何も言い返せない部長。

まぁ、向井ならそう答えてくると思ったけど。
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