ロールキャベツは好きですか?

ふいっと田島くんは身を翻して、トコトコと歩き始めた。
その背中を慌てて追いかける。

「……一目惚れでしたよ」

夜の道に田島くんの声が響く。

「入社して、研修期間に初めて、主任の姿を見たとき、その雰囲気に思わず息を呑んだんです」

まさか本当に言ってくれるとは、思わなかった。
けれど、せっかく彼が話してくれるのだから、と無言で先を促した。

「にこやかに笑って、だけど、体の奥には強い情熱を抱いている。そんな主任が気になって見つめていたら、最寄り駅が一緒だと気づきました」

「気づいていたなら、どうしてもっと早く言ってくれないのよ」

「すみません。言うタイミングずっと逃してきました」

田島くんは、秋物のコートのポケットに、そっと手を入れる。
さっきからずっと、こっちを見ないのは、照れているせいなのかもしれない。

それでも、歩くスピードは私と同じ。

< 97 / 210 >

この作品をシェア

pagetop