素直になれない7センチ
振り返って、予想通りの人物を見つめる。
あの頃は茶髪だったけど今は黒髪で、紺色のブレザーじゃなくて黒いスーツを着ている。
それだけで時の流れを感じた。
「久しぶりだね。“先生”」
嬉しそうに目を細めながら微笑む彼は昔よりも大人っぽくなっていて、どきりとした。
「……その呼び方やめて」
「あんまり変わってないね」
「ため口もだめ」
「二人なんだからいいじゃん? “香穂先生”」
だめだ。完全に相手のペースに乗せられてしまって、上手く言い返せない。
懐かしい呼び方に、彼の姿に胸がきゅっと苦しくなる。
「すごい偶然だよね。びっくりした」
「……うん」
まさか夏目くんと同じ会社で、同じフロアだなんてかなり驚いた。
こんな形で再会するなんて……。
「俺のこと覚えてくれてたんだね」
「……夏目くんこそ、私のことなんてとっくに忘れているかと思ってた」
「忘れられるわけないよ」
眉間に皺が寄せられて、悲しげな瞳が私を捕らえる。