セカンドパートナー
保健室の先生が使っているデスク脇の丸椅子に座ると同時に、閉めたはずの扉が勢いよく開きドキッとした。先生!? ……じゃ、なかった。
扉を開けたのは、さっきまで校庭にいたはずの並河君だった。会うのは、一緒に羽留のピアノを聴いた時以来。
気まずい……。サッカー姿を盗み見したあげく、目が合ったのに無視して走り去ってしまったから。
「やっぱり詩織だった。今、授業中じゃないの?」
「家庭科で調理実習中なんだけど、ヤケドしたから」
「そうなの? 大丈夫? 見せてみ?」
並河君は私の目の前に別の丸椅子を持ってきて座り、私の手を両手で包むようにそっと触った。
手当のためなんだろうけど、手を触られてドキドキしてしまう。今まであまり意識したことなかったけど、並河君の手、男の子って感じがする。私の手より大きくてゴツゴツしてて、力強い。
「ホントだ。けっこう腫れてるな。もっと冷やす?」
「大丈夫。水で冷やしてきたし、こんなの放っておけばそのうち治る」
愛想笑いで答えた。昔から、けっこうケガをしているけど、大した手当をしなくてもいつの間にか治っていた。ガラスで足を切った時も、親は私の心配なんてしてなかった。
「班長に言われて来たけど、保健室なんておおげさだよ」
「そんなことない。自分の体、大事にしないと」
「っ……」
そんなこと、初めて言われた。反応に困る……。