セカンドパートナー
優人と出会ったのは大学時代。
同じ授業を取り、たまたま隣の席になった私に明るく挨拶され、その笑顔に一目惚れしたのだと、彼は付き合った後に教えてくれた。その挨拶は特別な意味などなく、誰にでもする社交辞令のようなものだったのだけど。
だからだろう。優人には本当の私が見えていないのかもしれない。価値観のズレを感じるたびにそう思う。
あの頃はたしかに毎日がキラキラしていて楽しかったけど、自分の暗部を包み隠すために明るく振る舞っていた部分もおおいにあった。
卑屈で暗くて傷つきやすい、無限の愛をほしがる傷だらけの心……。
そういう、人に見せたら敬遠されそうなネガティブな面を、大学では一切出さないようにした。無表情以外の表情を身につけ、両親へのこだわりを捨ててやるんだと、必死に明るい女を演じた。
それでもやっぱり、根幹は変わらない。この歳になってなおさら思う。
私は私。派手さは望まない。こじんまりした自分でいい。色んなタイプの人と付き合い、人間関係に疲れるのはもうごめんだ。
色んなタイプの友人としっかり付き合っている優人みたいな人には、こういう気持ちが分からないらしい。友達が多いのは人の魅力のひとつだし、もちろんいいことだと思う。否定する気は全くない。
結婚後も優人の友達付き合いに干渉したことは一度たりともない。毎日ストレスにさらされ働く男の人こそ、そういう時間は必要だと思う。
だけど、だからって、友達多いイコール素晴らしいことだーみたいな価値観を押し付けられるのは不快だ。私にだって今までの人生があり、色々あってこういう思考に落ち着いたのだ。
ささいなことかもしれないけど、人にはおおげさだと思われるかもしれないけど、優人に悪意はないと分かっているけど、優人にそういうことを心配されるたび、自分を全否定されたような気持ちになる。