セカンドパートナー

「別に、書道教室は友達作るために入ったんじゃないから。気分転換したかっただけだよ」

 そうならないよう気をつけたものの、あからさまに不機嫌な言い方になる。しまったと思った。

「そんなに怒らないでよ……」
「怒ってないって」
「怒ってるじゃん…! ひどくない?」

 優人はムッとした顔で拗ねた。

 めんどくさ……。またかよ。新婚の頃から、こういう言い合いがたまにある。

 優しい一方、優人はこっちの感情の機微に鈍感だ。怒ってるんじゃなく傷ついているのだと、今まで何度か説明したけど理解してくれない。だから疲れる。

 こういう、伝えたいのに伝わらない思いに苛立った時、可愛げのないことや嫌味を言ってさらに相手を追い込むのが私の悪い癖。自覚していても直らないし、やめられない。

「ビックリするくらい綺麗な人だよ。優人、秋月さんのこと好きになるかもね」
「なんでそういうこと言うの? 本気? 結婚してるのに他の人に目行くわけないじゃん……。どうしたら怒るのやめてくれる?」

 優人は、私がまだ怒っていると思っている。怒っている理由すら正確に理解していないくせに、下手に出て機嫌だけを取りたがる。

 憎たらしいくらい純粋で素直。そんなところに、腹が立つ。

「おやすみ。疲れたからもう寝る」
「あまちゃん……!」

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