セカンドパートナー
ホッとしたのも束の間、秋月先生はそれまでと違う表情で並河君の方を向いた。
「久しぶりだね、奏詩」
秋月先生の声には甘い想いがにじんでいる。
初対面だけど、なぜだかこの時は分かってしまった。並河君を見つめる秋月先生は女の顔をしている。
彼との再会で灯った光が消えて、私の胸の中は真っ暗になる。
「……うん。なかなか会う時間取れなくてごめんな」
「いいの。忙しいのに時間作って顔見せに来てくれたんでしょ? ありがとう」
艶っぽい彼女の視線に答えるように、並河君は彼女の肩をポンポンと叩いた。そして、見たくないものを見るような目で私の方を見た。
高校時代に見たことがない並河君のその表情に、胸が激しく痛んだ。そんな顔、知らないーー。
二人は付き合ってるんだ……。
それならそうで教えてくれればよかったのに、メールではそんな話全然聞いてない…!
私は彼に全部話してきたつもりだ。大学で優人と恋を始めた時も、結婚が決まった時も。
だけど、並河君のことは何ひとつ知らなかった。人生の半分も友達でいたのに……。
「あのっ、私も教室に入らせてもらっていいでしょうか?」
とっさに出た言葉がそれだった。
秋月先生はハッとし、私の方に向いた。その顔はもう先生としてのそれだった。
「……ごめんなさい。彼とはなかなか会えないものだから、つい……。こんな風だから先輩方から未熟者と言われてしまうんですよね……」