セカンドパートナー
そんな私を見て秋月さんが口元に笑みを浮かべているのに、誰も気付かなかった。もちろん、私も。
これで離婚決定だな。あっけない。
上着なしで飛び出してきたので寒いはずなのに、夜風がやけに気持ちいい。
あの場を去れて気が楽になったものの行く先のアテもなく、静かな歩道をひたすら歩いた。スマホや財布も秋月さんちに置いてきてしまったから、羽留や美季にも連絡できない。
とにかく今はあの場所から離れたい。
うつむいたまま早足で歩いていると、高ぶっていた気持ちもじょじょに冷静になってくる。
飲み過ぎたのかもしれない。いくら何でもあれは言い過ぎだった。反省したものの、後悔はない。言いたいことが言えてようやくスッキリした。
もうごまかせない。あれが結婚生活に対する本音。今さら優人に謝る気にもなれない。
「詩織!」
並河君が追いかけてきた。慌てていたのだろう、上着も乱れ、靴もちゃんと履けてない。
「秋月さんに変に思われるよ、戻って」
「こんな時間に外で一人にさせられない」
並河君はとがめるように言い、自分の着ていた上着を私に羽織らせた。
……気まずい。結婚後、並河君には幸せな生活をしてると言いはっていたから。それでも並河君はそのことに触れず、
「何でも話して」
私の言葉を待ってくれた。