セカンドパートナー
当時から、並河君の絵の才能は教師をはじめ学年の生徒達からも注目を集めていた。そのせいで、彼の言動はささいなことすらウワサの種になり各クラスへ拡散される。
並河君も自分の立場を客観的に理解していたらしく、ウワサごとき何でもないという態度を貫いていた。
芸能人なみに注目されてるというのにその疲労感を表に出さないなんて、才能がある人はやっぱり違うんだなぁ……。こっちは気が気じゃないというのに。
どこでどうそんなウワサが流れたのか分からなかった。並河君の恋愛相手のウワサに関して、それがウソかホントなのか、深く突っ込む生徒はいなかった。
直接話したことはないけど、彼の名前くらいは他人のことに疎い私でも知っていた。
これは彼と友達になった後に知ったのだけど、他の同級生男子達に比べ並河君は大人びた雰囲気を持っていたし身長も高かったので、そこも女子にモテる理由のひとつだった。
彼の絵描き姿を目当てに美術室を訪れる女子がたくさんいたし、彼の片想い相手として初めてウワサになった私を気にする子もけっこういた。
「並河君が天使(あまつか)さんのこと好きらしいよ。天使さんは並河君のことどう思ってるの!?」
並河君と関わる前、全然面識のない女子達から興奮気味にそう訊かれ、困惑した。
有名人か何なのか知らないけど、並河君なんて、こっちはよく知らないし!
でも、ここで本当のことを言ったら角が立つ。女子同士の関係は、その辺のさじ加減がすごく難しい。
「何とも思ってないよ。私、並河君としゃべったことないし」
愛想笑いでそう答えた。