セカンドパートナー
でも、そういう対応には限界がある。
本来の自分ではない、仮の自分だからだ。
高校生になった頃から、それは顕著になっていった。学校で無理をしている分、家では反抗的な言動になった。いや、意識して反抗的に振る舞うというより、自然にそうなってしまうと言った方が正しい。
父の姿が視界に入るだけで吐き気がした。愛情なんてとうの昔に消失したくせに父の機嫌を損ねないように動く母にも苛立った。
そのうち親と挨拶することすら嫌になり、無視するようになった。そんな私を可愛げのかけらもないと判断した父はより暴力的になり、母は冷ややかな目で私を見るようになった。
今はそんな風でも、そのうち両親から愛される時がくるかもしれないという期待を捨てられずにいた。
親に口答えして大人の気分でいたけど、高校生の私はまだまだ幼い子供だった。
だからかもしれない。高校生になって初めて聴いた羽留のピアノに涙が出たのは。並河君のウワサを聞いた時、嬉しかったのは。
中学生の頃には知らなかった感情がどんどん溢れてくる。
ウワサだから、並河君のことは本当かどうか分からない。それでもワクワクした。こっちからは何もしてないのに前向きな感情を持ってくれる男子がいるかもしれないなんて、と。
愛情を得るためには先にこっちから何かを与えなければならない。親との関係でそう学んでいたから。