セカンドパートナー

 電話の相手には愛想良く振る舞う母から子機を受け取ると、父の視線から逃げるように私は自室に駆け込んだ。

「ビックリした。羽留、今日は忙しいって言ってたから」
『さっき帰ってきたとこ。これからピアノの練習しなきゃいけないんだけど、でもやっぱり詩織のこと気になったから……。今日、何かあった?』
「それは……」
『並河君?』

 羽留は鋭い…! 人をよく見てる。笑顔ではごまかせてなかったんだ。

「ケンカしたとかじゃないんだけど、気まずくなることがあって。帰りにもちょっと色々あって……」

 こうしている間も、父の不機嫌な声が扉越しに聞こえてくる。なぜだか分からないけど、父は私が電話している相手にまで腹を立てる。長電話は命取りだ。

 内心父の動向にヒヤヒヤしながら、今日あったことを簡単に話した。

 並河君にベル番を訊かれて断ったことや、電話番号すら交換できなかったこと。知らない男子のベル番メモをもらったこと。

『それは、なんていうか、一気に色々ありすぎて頭パンクするレベルだね』
「ホントだよ。どうしたらいいんだろ……。学校出てからずっと考えてるんだけど、全然分からなくて」
『そんなん、悩むの当たり前だよ。詩織はその男子のこと知らないし、特に仲良くしたいとかもないんだよね。だったら、向こうから何か言ってくるまでそのままにしといた方がいいよ。こっちから動いて気があるって勘違いされても困るし。もし何かあったら友達になるくらいにとどめておいてさ』
「それ、いいね……!」

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