セカンドパートナー
「わざわざ来なくても、音楽校舎の前で待ち合わせでもよかったのに」
そっけなく言う私に並河君は気分を悪くすることもなく、いつものように爽やかな態度を保っていた。
「詩織と一緒に行きたかったの!」
「そう……」
「あの子、名前なんて言うの? 今さらだけど」
「羽留だよ。小山羽留」
「小山さん、か。……やっぱり。ありがと」
やっぱり……? 今まで知らなかったのかな。それもそうか。二人が自己紹介し合う場面、なかったし。
気付いたら、並河君にまでモヤモヤした気持ちを感じていた。
「お待たせ! さ、座って座って」
音楽校舎内のレッスン室に行くなり、羽留は元気よく私達を迎えてくれた。
狭い方と広い方。二種類あるレッスン室のうち、広くて椅子のある方に招かれた。
「ここに座ってね」
並河君と私を隣同士に座らせ、羽留はグランドピアノに向かった。座る時、わずかに並河君の肩に自分の肩が当たってしまい、小さくのけぞってしまう。
制服越しにかすった肩が、緊張で震えた。心臓がおかしなくらいドキドキしている。
「じゃあ、弾くね」
「がんばれ、羽留」
小さく拍手し応援することで、並河君への緊張を和らげようとした。椅子と椅子がくっついているせいで、どうしたって並河君と距離が近くなる。
いつもはもっと遠いのに、今は並河君がこんなにも近い。不思議だし、夢の中にいるみたいに現実味がない。