お前のとなりは俺だから


「サボるとか言いながら歩いてったから、てっきり一時間目は居ないのかと……」


私がそう言うと、「もちろんそうしたいのは山々だが、お前の前に座ってる奴が親父にチクるって言葉が聞こえたから帰ってきた」と、楓のことを忌々しげに見た。


それを聞いた楓は吹き出して、「そうかそうか、未だにおじさんには弱いのか」と言った。


「今度から、これでいこう」


楓の言葉に、皐月は本気で顔を引きつらせた。


「おまっ、マジでやめろよ。親父が面倒くせぇの知ってんだろ」


皐月の言葉に、楓はニヤニヤしながら「え、私には優しいもん」と言う。


そんなことを二人で言い合いしているのを、ほのぼのとした気持ちで聞いていると、皐月が真面目な顔をして言った。


「親父には余計なこと言うなよ。やっと出れたのに、すぐに引き戻されるなんてゴメンだからな」


それを聞いた楓は、「あー、確かにそうだねー」と、何かを考えるような仕草をした。


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