手のなかにキミ
ファイト!

もう、うんざり。

昨日ちゃんと説明したのに、何度同じことを言わせるつもり?


「これはウチの所掌範囲? 営業に確認した?」


無駄に口髭を生やしたオッサンが、会議テーブルを挟んだ真向かいで野太い声を張り上げて笑う。完全に上から目線で、馬鹿にしたように眼を細めるのが気に入らない。


「はい、確認済みです。既に見積書も入手済みです」


笑い声に負けないようにと口調を強めたら、つい調子に乗って声を荒げてしまいそうになる。だけど我慢、苛立ちを抑えながら愛想笑い。
机上に広げた見積書を指差した。
私の指を追いかけて、オッサンが見積書を覗き込む。


「これ? だったら備考欄に書いて……」

「ここに、書いてます。文章はこれでよろしいですか?」


オッサンの声をバッサリと斬り捨ててるように言い放つ。
ちょっとスッキリする。


「ああ……これでいい。ありがとう」


ようやく納得したらしい。
いや、昨日同じやり取りをしたことを思い出したのかもしれない。

一時間に及ぶ天敵との戦いは終わった。





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