知らない貴方と、蜜月旅行
陽悟さんの顔を見て、ほんの少しだけ落ち着いた。一人じゃなくて良かったのかも…。


「紫月ちゃん…?大丈夫…?」
「ごめんなさいっ、あの私、たいしたことないと思ってたんです…。そしたら、あの、ヒビ入ってるって……」
「えぇっ?!どんだけ強くヤられたの……」
「……あはっ」


まさかヒビが入ってるとは思わなかった…。ちょっと打撲とか、そんなのを想像していたから…。だから陽悟さんの言葉に、小さく笑ってしまった。


「笑い事じゃないよ」
「え…っ、」
「その元彼の居場所教えて」


陽悟さんの真面目な顔に、少々驚いてしまった。しかも亮太の居場所を教えてなんて…。そんなの無理に決まってる。



「い、いや、大丈夫ですから!私の場合、ヒビと言っても軽いヒビ?らしいので、数日間固定してたら、あとはちょっと安静にしてれば治るらしいですし、」
「そういうことじゃないよ。どんな理由があっても女の子に手を上げるなんて最低。蒼井さんが許しても、俺は許さないから」
「………」


こう言っちゃなんだけど、陽悟さんには関係ない男なのに、どうしてそんなにしてまで怒ってくれるんだろう…。


「大丈夫、殴ったりしないよ。治療費もらってくるだけだから」
「でもっ、」
「蒼井さんが行くよりいいと思うけど。蒼井さんなら、ボコボコにするかもよ?」
「……っ、」


それは私も思ってた。だから、あの喫茶店で本当のことが言えなかっただけだし…。


「紫月ちゃん」
「………」


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