知らない貴方と、蜜月旅行
「佐野様、ご自分でメイクされますか?」


えぇっ!?メイクって、自分でするの!?どうしよう、メイク道具は持ってきているけど、私全然される気満々だったんだけど…。


「あ、えと。ご自分でされたいというお客様もいらっしゃるので、お聞きしたんです。もし、こだわりがなければ私のほうで、させていただきますので」
「そうなんですね。じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「かしこまりました」


そういうことだったのかぁ。そうだよね、こだわりがある女性はいるよね、きっと。アイラインの入れ方とか、ファンデーションはこれじゃなきゃダメだ、とか。私はまったくないから、楽な女だと思う。


「佐野様は、すごく肌がお綺麗なので、スッピンに近いメイクでも、大丈夫そうですねぇ」
「えっ!?そんなそんな、私なんか塗りたくらないと、見られない顔ですよ!」
「ふふっ、そんなことないですよ。チークも、ふんわりといれて、目元だけ少しアイラインの入れ方とかを変えれば、また違った佐野様になるかと」


違った私…。松本さんに、そう言われ、少しでもメイクで変われたら、このまま亮太のことを過去にできるかなって思った。





「お待たせ致しました。こんな感じになりましたが、いかがですか?」
「うっわ…!いつものメイクよりナチュラルだけど、目元のメイクだけでこんなに変わるなんて!」


私はパッチリ二重ではないから、いつもアイメイクは気合いを入れて取り掛かってたんだけど、松本さんのメイクは本当にナチュラル。でも、貧相に見えなくて、しばらくの間、私は鏡をジッと見てしまった。


「ありがとうございます!」
「いえいえ、とんでもございません。素敵な結婚式のお手伝いができて、光栄です」


そう言って松本さんは、笑った。素敵な結婚式、か…。そうなるはずだったんだけどね…。人生、なかなかうまくいかないよね。


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