知らない貴方と、蜜月旅行
「お、いいじゃん」
「りっ、亮太っ」


メイクと髪のセットが終わってすぐに、吏仁がメイク室に入ってきた。相変わらず私は〝吏仁〟と呼びかけて、息が詰まるのだけれど…。


「わぁ、新郎様。とても素敵ですね!いらした時から素敵でしたが、美男美女で、とても絵になりますね!」
「それはどうも」


この人。〝否定する〟って言葉は、頭にないのだろうか。確かに真っ白のタキシードを着ると、とてつもなくカッコイイけども!でもきっとそれは、この空間だからだと思うんだよね。


私だって、この空間だから、綺麗に見えるだけ。一歩外に出たら、そんな魔法なんてすぐに、溶けちゃうんだから。


「それでは、先に写真撮影しますね。こちらへ、どうぞ」


そう言ったのは木村さん。ドアを開け、廊下に出るように手のひらを見せ、案内をしてくれた。私は、吏仁が出た後、その背中を追った。


写真は枚数にしたら、十数枚だろうか。カメラ目線で撮ったり、笑顔全開でと要求されたり…。恥ずかしかったのは、お互いの顔を見つめ合う写真。こんなの、ただの拷問だよ…。そんな感情を持ちながら、撮影に挑んだ。


そして、ついに二人だけの結婚式がやってきた──


教会の中は、私が思い描いていた通りで、エレクトーンの音と心に響く歌声。それだけで、私は泣きそうになった。


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