知らない貴方と、蜜月旅行
二人だけの結婚式のために、父親とバージンロードは歩くことなく、最初から吏仁と歩く。いけない、と思っていても、亮太とのことを想像してしまう。


それは、この時までも──


「私は、この女性と結婚し、夫婦となろうとしています。私は、健康な時もそうでない時も、この人を愛し、この人を敬い、この人を慰め、この人を助け、私の命の限り固く節操を守ることを誓います」


誓いの言葉。吏仁の後に続き、私も同じことを言い誓う。


「私は、この男性と結婚し、夫婦となろうとしています。私は、健康な時もそうでない時も、この人を愛し、この人を敬い、この人を慰め、この人を助け、私の命の限り固く節操を守ることを誓います」


本来なら、この言葉は吏仁ではなく、亮太に誓う言葉だった。だけど、私の目の前にいるのは、数日前に会った男。どうしてだろう。どうして、亮太じゃないんだろう…。


「それでは、指輪の交換を」


牧師さんの言葉に、ハッとする。そういえば、指輪なんて用意していない。やっぱり、結婚式で新郎の代わりなんて、簡単なことじゃないんだよ…。


けれども、吏仁は、そういうことも卒なくこなしちゃうんだよね──


「なんつー、顔してんだよ」
「だって…!」
「可愛い顔が台無しだろ」
「……っ、」


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