知らない貴方と、蜜月旅行
木村さんにそう迎え入れられ、私はただ笑うことしかできなかった。もう、あとは着替えをして、女の憧れのウェディングドレスから、現実に戻る。


「髪は、このままになさいますか?」
「そうですね。せっかく可愛くセットしてもらったので、このままでお願いしようかな」
「はい、かしこまりました」


ドレスとはサヨナラだけど、メイクと髪だけは、まだ余韻に浸っていたい……気がする。


「素敵な指輪ですよね」
「えっ?あー、そうですね。ちょっとサイズが合ってないですけど」


吏仁が用意してくれた、サプライズの指輪。一体いつの間に、買いに行ってたんだろう。私が洋服の試着をしている間?でも、彼は彼で色々買ってた気もするし…。


すごく気になって、松本さんに見えないように、そっと指輪を外し、内側に目をやった。


………。見なきゃ、よかった、かな…。 RIRIKAって、誰だろう。指輪の内側には、ローマ字で〝RIRIKA〟と彫ってあった。


これは間違いなく、私の為に作られた指輪ではない。そりゃそうだ。たった一日で作れるわけがないもの。じゃあ、この指輪はなに?RIRIKAって何者?吏仁とRIRIKAさんって、どういう関係なのかな。


指輪を彼女の為に作るんだもん、ただの友達ではないよね。でも、吏仁は私と籍を入れた。じゃあ、RIRIKAさんとの親密な関係は終わってるということ…?


んー、ここで悩んでても仕方ないか…。ちゃんと、聞かなきゃね。聞いて、それから決めよう。


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